2013年7月25日木曜日

toitoitoiレコーディング(4) シャッフルの話とかも

toitoitoiのレコーディングは彼らのライブの合間合間に組み込んで進行中です。8月はかなり集中するようです。

toitoitoiレコーディング(1)は→こちら
toitoitoiレコーディング(2)は→こちら
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CDが出来上がるのが待ち遠しいですが博士(今回はなぜかそう呼ぶ)はリズムのハネ方(=シャッフル又はスウィングともいいます、ニュアンスは違うのですが)におおハマりしていました。ハネ方の量や傾向にはいろんな量(それと量の変化としての質など)があるからです。

音楽を専門的に知らないひとのために言うと、
「タタタタタタタタ」っていうリズムが「タッタタッタタッタタッタ」って感じに「ハネた感じ」になるのがシャッフルです。でもって「タッ」と「タ」の長さというかタイミングが 2対1、つまり三分割になってるのが100%シャッフルです。人間がスキップするときはシャッフルしてますよね、あの感じ。

でも人間が演奏するビートはもともと1対1だったものが言葉や楽器や身体の都合でなまっていったもののようで、その「比」もいろいろ。たとえばYMOは Absolute Ego Song 制作のときに沖縄民謡の「ハネ方」を14対10と測定してこれをもとにトラックを制作しています。このように2分割が訛ったものをスウィングって言うようです。スウィングってとてもナチュラルなことなんでしょうね。でもってJazzではそれを「クール」や「ダンサブル」なものとして強調して来たり。

ポップスを「微妙なシャッフル(スウィング)感」で聴いてみるのも楽しいです。
カーペンターズのこれ、とてもナチュラルに歌っていますがサビで入るタンバリンが「チャッカチャッカチャッカチャッカ」と「訛って」います。計ってないけどきっと30-50%くらいのシャッフル(スウィング)だと思います。


でもってとっても悩ましいスウィングはエルビスの監獄ロック、歌頭は歌ごとおもいっきりスウィングしていますが本編に入るととたんに「跳ねないビート」に代わります。ハイハットはちょっとハネていて、デデデデデデデデって弾いてるエレキギターは跳ねるのを必死で我慢しています。この時代は「跳ねないことがロックらしくて新しかった」のかもしれませんね。


余談ですがウルトラセブンの主題歌は100%に近いシャッフルビートです。
サビのシンバル「チーチチチーチチチーチチチーチチ」を聴いてください。



本日のギターはこんな感じで録音

ギターはこんな感じで狙っています。本当はあと3-50センチくらい離したいのです、何故かというとそのほうがギターを全体として録音できるからです。ですがその場合は録音場所の静粛性、余分な反射が無いかなどがとても重要になります。よく設計されたスタジオのブースでないかぎりあまり距離をとるとうまくいかないと思います。
1000本ノックのようにガリガリ弾いてスケジュールを前進させる村越博士
美しく巧みな和音構成+ギターらしさを活かすフレージングに邁進する村越博士

細かい指弾きをしてるときって、やっぱりそれが視覚的に見えるところから録りたいと思っちゃいますね。でその音が逆に「ぎこちない」「きたない」感じがしたら直接弦をはじく音を手の甲がカバーするような位置にマイクを移動します。

くれぐれも、サウンドホールの真ん前にサウンドホールに向けてマイキングしないほうがいいです。穴と低音とマイキングの関係はカホンで練習するといいかも。はい。

toitoitoiいいですよ、ファンになってください。
2013/02/16(土) 寝屋川VINTAGE(大阪)

2013年7月8日月曜日

toitoitoi レコーディング(3)

一昨日・昨日のレコーディング日記です。

諸先輩方をさしおいてのこの日記シリーズ、無礼をお許しください。
僕のリビングスタジオ(ケロケロスタジオ・仮称)とリハスタなどをノマドしてコストを節約することでなるべく多くの時間と手間をかけて進行しています。レコーディングの中で得る体験はものすごい情報量!とても貴重だと思うからです。

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toitoitoiレコーディング(2)は→こちら


一日の終わりは合宿のようにみんなで一緒に食事をして讃え合いアホ話をします

さてここ2日で1曲はミックス前までできたかな?

「ふXXX」のエレキギターとエレピの録音

バッキングで壁を作るため2本ダブルで録音するなど。やってみるとよくわかるのですが、ある程度リズムをきっちりやることでステレオ感やしっかりした壁感が出ますが、だるーんと弾くとやわやわな壁かカーテン程度の音になるってのを確認しながら進行。
この曲はこの後スタジオに移動してドラム等を録る予定。


「ぬかxXX」のメインボーカルとギターを録音

この曲だけではないけど長くライブでやってきたこの曲は演奏者の絶妙な間合いと信頼関係が発音のタイミングに現れていて、なんていうか、クリックだけを頼りにしてもうまくいかない。そういうおそらく当たり前な事を実感しつつ録音。

岸川さん唄ほんとうまい。機材的にはボーカルは録りは全くのフラット、TL-102と828MK3の組み合わせでHAのレベルは13−15dB。ラフミックスもいつもNo-EQ+ちょっとリミッターくらいしかしない。最終ミックスまで彼女の声にイコライザーをかけないで済むといいなあって感じ。ミックスするときに、基準の音としての彼女の声があるととっても楽です、こういうの大切。なんでもエフェクトすればいいってもんじゃない。


AKG C-2000B

アコギのマイキングですが、よく演奏者側から見て右斜め上前方から録音したりするのですが、今回はその対象の位置、左斜め下から狙っています。ヘッドフォンからのクリック漏れを最小限に防げることと、ちょっと距離が近めなので弦に右手が被っていなく弦が見えている機会が多いのが下側、というアイディアです。
ちなみにサウンドホールを狙いすぎたり、ましてホールに垂直に狙うとかならずモコモコします、カホンの後ろ側も同じ、斜めに狙うのがポイントです。どちら側からどっち向きに狙うかで低音のキャラが変わります。逆に低音を(基音まで)しっかり欲しいときは振動面に対してマイクを垂直に。

C-2000Bは買いやすい値段で安定感のあるコンデンサーマイクです。ちょっと低音がモタつく感じがして、最終的にはTL-102で録音しました。

機材の選び方
最近は雑誌に情報もあるし、機材自体も安く買いやすいものが増えているのですが、一番大切なことは「機材の癖を知ること」と「判断できる基準を持つ努力をすること」かな。癖にはいいところと悪いところがあると思うのです。でもさっきの「悪い」が次のシーンで「功を奏する」こともある。で、そのエッセンス・理由はなんだったんだろう。どんな風にするとどんな感じになるんだろう、というのを知って行くと購買も最小限で済みます。
もうひとつ言うとマスタリングスタジオにあるような高級な機材(「癖が無い」という癖も評価されるものもあったりなかったり)などでも、エンジニアがその機材をどう触るとどうなるか、という「癖」を知っているからその機材が活きるわけです。なのでその機材を買えば誰にでもその音が出ると思うのは本質的には大間違い!ローマの道も一歩からなのですっ。なんか違うか。。

えー、そんな感じで例によって一日の終わりは合宿のようにみんなで一緒に食事をしてお互いを讃え合いとことんアホ話をします、これ大切。

ちなみに僕のスケジュールにはまだすこし余裕がありますのでご興味おありの方、是非やらせてください。マスタリングやMixの駆け込み寺的使用も歓迎!

toitoitoiはなかなかいい感じ、webは→こちら
直近のライブは 2013.7.10(WED) 稲毛 K's Dream OPEN 18:00 / START 18:30


 toitoitoi - ベイビ (@Zher the ZOO YOYOGI, 2013/04/13)

2013年7月5日金曜日

古いアンプ Musical Fidelity A1 のメインテナンスをしました

Musical Fidelity A1 というプリメインアンプの修理をしました。

数年前にオークションでゲットしましたが大音量でちょっと定位がゆらゆらするので放置していました。パワー段を引っ張るコンデンサの容量抜けが原因でしょう。

このアンプのスペックは→こちら



このアンプはとてもシンプルな回路設計のA級増幅を採用しています。A級増幅ゆえ温度上昇が激しく、自分の熱でコンデンサーの特性劣化が激しいと言われています。他のみなさんの例と変わらずのメンテナンスです。

ところで古いシンセを触るときも同じですが僕はメインテナンスのコンセプトとして、あまり「改善」をしないようにこころがけます。発売当初には世の中に存在しなかった高性能なパーツがいまではいろいろ手に入りますが、そういうものをつかった「バージョンアップ」的なことはあまりしない。基本は復元であり、当時の味のまま(なんなら若干劣化も楽しみながら)がいいと思っています。

修理項目は以下

・プシュプル動作をさせる回路に電源をサプライするための大容量コンデンサーを交換
・電源部分の整流用ダイオードを交換
・入力セレクターのスイッチクリーニング
・電源ケーブルが見た目チープなので交換

この程度のシンプルな作業とします。

左端のパンパンに膨らんだ電解コンデンサーを見よ!

今回のメインであるコンデンサーはこれ。上の写真の左端でパンパンに膨らんでいるのがわかるでしょうか?時代とともにパーツはサイズも小さくなっていて交換済みが下。

普通の10000μF/25Vの電解コン、1個500円 x 4 使用
そして電源ケーブル。厚い被服の普通のケーブル、パソコンなんかについてくるやつですね。12mm径のケーブルだとそれを止めるブッシュがちょうど既存の穴にハマります。穴あけ不要♡。ちなみに電源ケーブルは外形は立派になりましたが導線自体の径はかわっていないので改善にはなっていません、見た目だけ立派に。高級オーディオ向けのケーブルは多々ありますが、とりあえず芯線の断面積の多いもののほうが有利でしょうね。
ケーブルは家にあったやつ・12φ用ブッシュは160円
整流用ブリッジダイオードのどれかが完全導通しちゃうトラブルが多いらしいのですが、チェックしたところ4個とも活きていました、が交換しました。1000V/32Aのブリッジに差し替え(320円)。ちなみにいまは電圧降下のすくないいいダイオードが出ていますが、今回のコンセプトは復元なのでそのような部品は使いません。

スイッチのクリーニングは、悪魔の「接点復活剤」。この手の商品でクリーニングすると部品に油が残り、それ自身が皮膜になりまた接触不良を起こします。なので「シューッとぶっ込んで・可動部分を死ぬほどカチカチ動かし・無水エタノールで流す」でいきます。スイッチやボリュームというものは使っている間は自己復帰作用があるのでそんなに問題が出ないものなので直したら使うことが大切。

外した部品たち、残骸ですね
本当はプリアンプ部分のカップリングコンデンサも変えるといいし、パスコンを足すといいと思うのですけど今回は割愛。2500円でまあまあスッキリしました。

死なないんだろうけど熱いので清音なファンでご機嫌なA1
作業が終わったらスピーカー端子に直流電圧がでていないかをテスターで確認するのを忘れない。たいていのものが壊れても煙が出ても死なないけどスピーカーを飛ばすのはダメージが大きすぎるので。

さて音出しです。
A1の出力はたったの20W+20W/8Ω ですが音はぶ厚いです。ぐぐっと押してくる感じの、アンプ本体同様に熱い音がして、このアンプのファンが多いことにもうなづけます。
部品点数が少ないので修理もそんなに大変ではない、とてもいいアンプです。

オークションに出てたら買いましょうね。

あらためてスタートします。

いままで
http://enjoyapps.blogspot.jp/
というURLで発信していたこのブログ
(といっても随分間があいていますが)

は今日から

http://ultramusicjp.blogspot.jp/
として再スタートします。
もうすこし自分の周囲の最新な情報を多く発信したいので[app]というくくりを一旦忘れることに。もちろん音楽に関連したアプリや道具について思うこともどんどん発信していきます。

新たに加わるのは面白いレコーディング日記、機材の修理やアナログシンセなどハードウエアの話、インディペンデントな音楽制作への思いやヒントなどなど。あとレコ評なんかも載せて、いくかもです。

ではではこれからもよろしくお願い致します(ぺこり)。

藤木和人




おまけ:

これはあるシンセの概念図がとても正確に書かれています、さて機材名は?