自分が大きなスタジオにいたときに出会ったひとたち、聴いた音、巨匠たちのほんのひと言ふた言のヒントは自分の制作案件でも、他のアーティストとのコワークにおいてもとても役立つことばかり、忘れてはいけないことばかりです。一部を書いてみます。
「これいいマイクなんでしょ?だったらいい音が録れるはずでしょう?」
ずっと昔トランぺッターの近藤等則さんが登戸にスタジオを持っていてそこでドラムを録音したときにドラマーの山木秀夫さんが言った言葉です。スネアをダビングしようとしていたんですが、山木さんが叩いていい音だと思うところにノイマンのU-89を立てては録音してプレイバックを繰り返し、やっといいセッティングを見つけました。
「ミックスバランスが悪いんじゃない、うまくいかないときはアレンジが悪いんだ」
当時アレンジャー・プロデューサーだった伊藤善之くんの言葉です。これはかなり強く胸に染みて、実際自分でカンパケまでやるときなどはアレンジとエンジニアリングの同時進行なので意識しないのですがとても大切なルール!以前は自分がアレンジャーとしてミックスに立ち会うと「これ上げて欲しい」「これ大きすぎる」みたいなオーダーをエンジニアお願いしまくっていましたが、その節はすいませんでした。僕のアレンジが未熟だったのだと思います。伊藤くんは今ランティスの偉い人です。
「ミックスのときは歌詞カードを見ない人が歌詞をちゃんと聴き取れるか」
基本なのだと思います。ビクターで小泉今日子などを担当していたの田村プロデューサーがぼそっと言っていて今も自分の中でいつも繰り返し響く言葉です。セールスにも直結するだろうし、作家の意図が変わってしまう場合もあるでしょうね。
「コードチェンジの頻度を変てみなさい」
平井夏美先生が僕の曲を弾きなおしながらそう言いました。コードのパターンが少なくてもAメロとBメロでコードを倍でチェンジしたり半分にしたりすることで音楽に展開感を得る事ができます。これは編曲でも、作曲するときにもものすごく役に立つノウハウです。先生は「瑠璃色の地球」や「少年時代」を書いています。
「歌の音程が気になるときは小さくするともっと気になる」
TPDの産みのお父さんである清水彰彦プロデューサーと太田エンジニアで体験して結論しました。人間の耳は見つけた音にフォーカスして追尾します。それが小さく消えて行く音だとさらにそれをチェイスするようです。それ以来ミックスでは歌を大きめにするようになりました。
「ユニゾンは最強のハーモニー」
ベートーベンが言ったそうです。音楽では同じ音程は「1度」のハーモニーです「0」ではなく「1」としての価値のある音です。クラシックでもユニゾンは基本、モータウンやフィラデルフィアのストリングスサウンドはユニゾンが基軸にあります。かっこいい!市立ながら恵まれた須坂市立旭ヶ丘小学校で吹奏楽を持っていて僕はトロンボーンを吹いていました。顧問の岩崎先生が「ベートーベンがそう言っている」と教えてくれました。チューニングをするために「ポー」っとみんなで音を出すのですが、それが美しくなくてイライラしていたのでしょう。
「うまく合っていなくてもユニゾンは最強のハーモニー」
僕が(誰もが)SMAPを聴いて思うことです(笑)でももちろんアーティストもスタッフも大変に頑張っているのをよく知っています!
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僕はもちろん名のある一流のレコーディングエンジニアでも名人でもくて、先輩にも友人にも名人エンジニアばかりがいるので本当は恥ずかしいのですがそれはさておき(笑)、自分は自身がミュージシャンとしての作曲や編曲から仕上げまでやってきた経験と大きなスタジオにいた間に得た貴重な経験ノウハウでアーティストとつき合っています。
2013年1月発売予定のtoitoitoiのアルバムデコーディングがほぼ終わりつつあります。
優れたアーティストと仕事をすることは本当に楽しく自身のためになります。自分が当たり前に知っていて言うまでもないことがアーティストのヒントになることもあったと思いますが、その逆もたくさんあってとても刺激的な毎日でした。
ああだこうだいいながら一緒に実験したり、違うコードを提案したり録音とプレイバックの繰り返しで。アーティストは自分の演奏や変化を確認し、さっきより良くなる方法を知ってしまい、ミックスをチェックする間に耳も良くなってしまったようで驚いています。レコーディングで得られる経験値ってものすごいものがあるみたいです。
こんなコワークに興味があるアーティスト・制作者のみなさん、まずは是非
ケロスタに飯を食いにきてください。
ultramusic.jpでは音楽制作とインディペンデントはじめアーティストのみなさんの制作をサポートしています。